さすらいの犬、コートニー
「クスッ」
「クスクス」
「クスクスクスッ」
こちらで Hさんの絵キルトの布をあれやこれや探している間中、Kさんの笑い声が気になって、気になって、結局見に行っては皆が一緒に笑う、笑う。
実はKさんは一冊の絵本を捲っているのです。
刺繍が得意で沢山あっても苦にならないKさん。
去年、一昨年とジョン・バーニンガムさんの[フランス]とか[イギリス]の中の一場面を作りました。
さて、今年は何をしよう?と思案中。
他の絵本もいろいろ見せましたが、やっぱりバーニンガムさんが気になる様子。
絵キルトの良いところは始めは何か美しい、とか可愛い、画面を探して絵本を観ているうちに、その作家の作風や人柄に触れ、ファンになっていくことです。
そこで今日は、絵キルトの場面にはならないかもしれないけれど、犬好きのKさんのために、絵本図書館からバーニンガムさんの[コートニー]を取り出してきて渡してみたのです。
「血統書付きの立派な犬を買ってきなさい」
と両親に言われたのに姉弟がもらってきたのは「誰もほしがらない犬」、雑種でじいさん犬のコートニー。
案の定、とうさん、かあさんはよい顔をしなかったけれど、コートニーはどこからか大きなトランクをひきずって登場。
美味しい料理は作るわ、ウェイターの服に着替えて給仕はするわ、食事の間にはバイオリンの演奏はしてくれるわ、曲芸で赤ちゃんを喜ばしてくれるわ…。
毎日、掃除、草刈り、かあさんのダンスの相手。
火事から赤ちゃんまで救います。
それがやっぱりバーニンガムさんお得意のまぶたの腫れたすっとぼけた表情の何もいわないじいさん犬というのがなんともステキ。
ところがある日のこと、コートニーはいなくなっちゃうのです。
谷川俊太郎さん訳の名作。
絵キルトのテーマは決まらなかったけれど、帰りにKさんは[コートニー]を買って帰りました。
一度、読むと忘れられなくなる犬なんです。