見えないものを見る
[見えないものを見る―絵描きの眼・作家の眼―]
これは絵本作家伊勢英子さんとノンフィクション作家の柳田邦男さんの共著、一人ずつの言葉と対談を編集したものですが、その最後の方に、柳田さんが書いておられました。
「ナイチンゲールが晩年に書き遺した看護学覚え書のなかで、こういうこといってるんです。
『看護婦たるものは未だ経験せざることであっても、それを感知する資質を持たなければならない』
若い看護婦さんは 人生経験がまだ豊富ではない。それでも、人の生死にかかわり、人の苦悩と付き合うプロフェッショナルとしては、経験しないことであっても、それを感知する資質を持たなければならないというのですから、ものすごく難しいこと要求してるわけです。
これ、本気になって考えたらノイローゼになってしまうくらい難しいことですけど、この課題は看護婦さんだけのものでなく、あるいは作家や絵描きだけの特別のものではなく、多くの人に共通に求められるものだと思います。
人のことを理解するというのは、とても難しいことですね。自分と違う人生を歩んできた人が何を考え、何を悩み、どう生きようとしてるのが何を表現しようとしているのか、そういうことを理解するには、まず経験が大事だけれど、同時に経験を超えた何かを持たなければならない。
それは伊勢さんの言葉でいえば想像力ということになるのでしょうか。そういうものを持たないと、大事なところを見落としてしまう。
とくに今日のように情報が氾濫し、科学技術的なものが優先するなかでは、大事なものを見落としてしまう恐れが強い。―中略―
そこで、大事なものを見抜く資質の問題になるのですが、これは簡便なノウハウなどはない。
生まれ育ちの環境と教育のなかで培われる感性や思考力のすべてだからです。」
(生まれ育ちの環境と教育のなかで)…
持って生まれた感性というのもあるでしょう。
でも親や周りの人が築いていく環境や教育が大きな役割を持つのも確かです。
[絵本]のおもしろさ、良さを知ることが、本好きになる道程に…。
そう考えて、ゆう風舎を始めてから19年。
今回のパネル柄のテーマはズバリ〈本と子ども〉です。
「とうとう出ましたね。一作目から少しずつは入っていましたが…。全体の絵をみていると、ゆう風舎の絵本図書館を思い出します」
担当のOさんがそんなふうに言ってくれました。