厚み
[マイケル・ジャクソン・コンプリートワークス]を読むと、なぜ、[Thriller]が1億1000枚以上も売れたのか?
なぜ、何度聴いても飽きないのか?と言う理由が判ります。
「魔法をかけたい。ありえない組み合わせを考えたり。意外すぎてみんなの頭がぶっ飛ぶような」
「時代の先にあって、みんなに『こんなの想像もつかなかった』って言わせたい…」
云々の、マイケルが描いた夢や、浮かんだ曲を、飛び抜けた実力を持つ専門家がそれぞれ、自分の最高の力を出した仕事の集大成。
特にプロデューサーだったクインシー・ジョーンズは「彼は重厚で豪華なアレンジやレコーディングを好んだ。彼は音に色や手触りを付けるのが好きなんだ。つまり、似ている音や異質な音をたくさん重ね合わせて、独特の性格を持った音を作るんだ」そうです。
私はこれを読んで、芸術的欲求を掘り下げるためにすることは、音楽でも絵画でも同じだなあ、と思いました。
特に私が学生時代に学んだ日本画では、絵の具の層を何重にも何重にも重ねて、自分の思い描いている色や質感に近づけていくのです。
公募展に出品するような作品は大きな画面ですから、それこそ気の遠くなるような作業です。
これは近代日本画の重鎮、故・高山辰雄氏の作品です。
晩年の作品はますます絵の具の層は深くなり、物や人の形は朦朧としてきて、ただ深い人生観、自然観、内面に迫る思索的な雰囲気がいっそう輝いてきます。
絵画は孤独な独りの作業ですが、マイケルは最後まで、最高のミュージシャンと共に作り上げていったのです。
「人はいつか死ぬけど、作品は永遠に生き続ける」
と、考えて。
なので彼の曲はできるだけ、高音質のプレイヤー、ヘッドホンで聴くことをオススメします。
きっと、なぜ彼の音楽が、国境、人種、宗教、性別、年齢を超えて愛されたのか、判ってもらえると思うのですが…。