グラン・メゾン
[繕い裁つ人]の時の予告編を観た時からどうしても観に行きたかった映画。
[ディオールと私]
2012年に老舗ハイブランド[Dior]のアーティスティック・ディレクターに大抜擢された47歳のラフ・シモンズが沢山のお針子さん達とたった8週間でオートクチュールのコレクション発表のためのドレスを作るまでを描いたドキュメンタリーです。
そんなグラン・メゾンの内側にカメラが入り込むことは珍しく、あの美しい夢のようなドレスたちがどうやって出来上がっていくのか?興味津々、子どもの頃から
(プレタポルテとオートクチュールってどう違うの?)
と思っていた私は観に行きたかったのです。
それで昨日、行って来ました。
予告編は三ノ宮のシネリーブルで観たので当然そこであるのだ、と思っていたのですがさにあらず、関西では一カ所だけ。
梅田のスカイビルにある[シネリーブル梅田]
(東京ではれいの文化村の[ル・シネマ]です)
オートクチュールというのは高級注文服、プレタポルテというのは高級既製服。
そこにはやはり大きな違いがあるのでしょう。
プレタポルテ出身、しかも主として紳士服を成功させていたベルギー人のラフ・シモンズにとっては伝統的なパリの老舗のコレクションをしかもほとんど時間的な余裕もなく作っていくのは物凄いプレッシャーだったと想像できます。
〈テーラード〉部門と〈ドレス〉部門、二つある部屋で働く大勢の誇りあるお針子さん達を束ねるお二人の室長さんが見た目フツーのオバサンだったことが又魅力的。
でも、本当にその方達の徹夜の尽力が無ければ、華やかなコレクションは成り立ちません。
又、ラフはイメージをかきたてるために美術館に通います。
そこで出会った現代アートをどうしても布にしたい、と無理難題を…
そして、これまたその方のスタッフの尽力で実現していきます。
コレクション発表の会場は空いている大きな古い邸宅。
その中の壁という壁を生花で埋め尽くすのです。
前の晩にもドレスの(やり直し)があって…
当日、もう皆が揃った所へバタバタと搬入される50何体のドレスたち…
コレクションの観客にはヴォーグ社の伝説の編集長アナ・ウィンターや女優のシャロン・ストーン始めセレブ、セレブ…
宣伝のためにする自身の写真撮影やインタビューについて広報係の人に言い含められている時には
「そういう事は一番苦手だ。出来る限り最小限で…」
みたいな事を神経質そうに言っていたラフが、皆の感動の拍手の嵐の中で感極まって、自分から駆け上がってしまうラストは人間らしくてとても好感を持ちました。
パンフレットにも
「ショーのラストでシモンズが感極まって涙するのは、豪華なゲストたちに対してではなく、自分を受け容れ、成功へと導いてくれたアトリエに対する感謝の気持ちが思わず涙腺を緩ませたに違いない」
と書いてありましたが、それはそうだろうと思います。
苦しければ苦しかったほど、その喜びは大きいのでしょうね。