バックさん
たかじんさんが亡くなってしまったのも関西人の私としては寂しいですが、暮れに亡くなった偉大なアニメーション作家フレデリック・バックさん。
ドイツに生まれカナダに移住したバックさんの代表作は何と言っても[木を植えた男]
初めて観た時、頭も心もザワザワするような感動を覚えたものです。
写真にあるように絵本も出ていますがやっぱりアニメーションの短編映画が圧巻。
色鉛筆の繊細で柔らかい絵が躍動する映像は、2万枚に及ぶ原画のほとんどをバックさん自身が5年半かけて描いたそうです。
荒れ果てた村…住んでいる人々の心も荒れ果て、争いが絶えません。
その村から少し離れた山の一軒家に独り暮らしする男。
たった一人で黙々と木の実を植え続け、もちろんせっかく育った苗が、自然の猛威の中で全滅したことも。
それでも何年にも渡って黙々と植え続け、いつしか時がたって山は豊かな森となり…。
人々の暮らしや心までもが変化していく…。
感動の物語。
ジャン・ジオノさん原作のこの物語は体験を基にしてはいるものの、実在の人物ではない、ということを後で知った時には正直がっかりしましたが(バックさんもそうだったそう)それでも人間の心にある一つの理想として感動の物語には何ら変わりません。
それを長い年月をかけて静かな静かな、心に染み入るような短編映画にしたバックさん。
1987年アカデミー賞短編映画賞を受賞しています。
「芸術が世の中を変えることができるのか?」
という問いに
「そのために芸術はあるのだと思います」
と、答えたと朝日新聞に載っていました。