しめやかに小雨が降る中、今朝は告別式に行ってきました。
[ゆう風舎]の建物を建てて下さった、ご近所の大工さんのお母様のです。
この大工さん、Tさんには私達二人は言葉では言い表せないくらい感謝しています。
連れ合いが 勤めから帰っては毎晩、毎晩時間をかけて、あーでもない、こーでもないと一生懸命考え、図面を引いた案を 実際に形にして下さった方です。
元々、お父上が腕の良い宮大工、自身もお寺の修復は勿論、この辺一帯の新築や改修を引き受ける実力派ではありましたが、全て日本家屋、洋風建築は初めてでいらっしゃいました。
私達のそれまでの概念では、ベテランの棟梁ほど 素人の希望やプラン等には首を縦にふりにくく、経験から
「この方がいいですよ」
と、それまでのやり方や材料を薦められる…。
そんな風に思っていました。
でも、Tさんは違いました。
今でも忘れられないのはかれこれ20年前。
隣の母屋で、連れ合いのかいた図面を挟んで二人がじーと沈黙。
ときどき、何か質問する連れ合いの言葉に
「ハア、それはできますよ」とだけ。
そして又図面をじーと見て…。
その繰り返し。
京都のせっかちの家に生まれ育った私には到底ついていけない長ーーい時間が流れていました。
設計が好き、といってもあくまで素人の引いた図面。
しかも、ドアやステンドグラスや絵タイルや、と元々勝手に買い込んでいたものを付けてほしい、と頼まれ、それでも文句の一つも言わず、いつも
「はい。大丈夫ですよ」…
昔、「男は黙って〇〇ビール」というコマーシャルがありましたが、まさにそんな雰囲気。
左官屋さんや建具屋さん等、組んで為さる方は勿論おられたし、棟上げなどどうしても二人以上必要な時は助っ人を呼んでられましたが基本的には一人でコツコツされました。
3時のおやつの時も、何人かおられる時は合わせて談笑してられましたが、お一人の時はお茶を一杯飲むとさっと切り上げて仕事を再開する…。
スリムなその姿にすっかり惚れ込んだものです。
何年かしてショップとカフェを新築した時も勿論Tさんにお願いしました。
今日、久しぶりに姿を拝見しましたが、お母様のお位牌を抱いたTさん、髪も白くなられ、歳をとられたなー、と…。
でも、いつまでも活躍してほしいです。
Tさんの仕事で一番、頭が下がるのが 写真に写ったこの部分。
イギリス、チューダー様式にこだわり、2階が1階より出っ張った壁になるよう依頼。
支えたこの梁、鋸で切断した後、一つ一つかんなで形を削って下さったそうな…。
そんな方がご近所におられたなんて幸福です。
誠実な仕事で生まれたゆう風舎。
(きっと、昨日亡くなったお母様が育まれたのですね)
その思いを大事にしながら私達の仕事も続けていきたいと思っています。