黒いレース

2011年5月29日(日) ブログ
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朝一番の電話

「あ!ゆかりちゃん?(幾つになっても“ゆかりちゃん”です)こんな台風来そうな日だから、お兄ちゃんに(幾つになっても“お兄ちゃん”です)今日はやめとき、ってゆっといて」

母の女学生時代からの親友、Mさんからです。
「テレビの話は又ゆっくり、ね!」
80半ばになられても声も話し振りも昔とおんなし…。
私の仕事中をおもんばかって、さっと電話を切るカッコ良さ。

(誰にも甘えず、一人で仕事をしてきた人はやっぱり違うなぁ)
電話を切った私はしみじみ感心しました。

京都中京区の裕福なたんす屋さんの娘として生まれた彼女。
生まれつき、右手の親指と小指以外の指が縮んでいる、という奇形を持っておられました。
そのため独身を決心、大いに勉強して服飾デザイナーとしてアトリエを構えるようになりました。
顧客は 湯川博士夫人他、京都セレブ。
ときどき、母についていっては、左腕にピンクッションのついたリストバンド?をはめ、親指と小指だけで器用に仮縫いをしていく姿と、ヨーロッパ製の美しい布の彩りが 子供心にも焼き付いていました。

そんなMさんが 長年住み慣れた家を処分、親戚からも離れた山科の医療施設突きマンションへ引っ越しされたのは 去年の暮れでした。
[終の住みか]への、潔い決断です。

母の病院にも 最後まで来てくれたMさんに、久しぶりに会いに行こうと相談しつつ、なかなか日をとれない私を残して まずは兄一人で、という日でした。

ところで、もっと前。
アトリエをしまう時に
「ゆかりちゃん、いろいろレースの端切れ使うでしょ?貰ってくれる?」
というMさんの言葉に、楽しみにしていた私に届いたのは、レースはレースでもなんと黒いレースのいろいろでした。

(はぁ〜こういうので服作る人もいるんやなあ)と眺めながら…
私は何にしたらいいかわかりません。
この際は[黒好き]のHさんがパーティ・バッグでも作らないかな?