ふたり

2017年9月9日(土) ブログ
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感動した本に出会うと 他の人にも
(読んでほしい…)
と、思います。
 
Iさんが貸してくれた、高山文彦さん著の[ふたり]は愛蔵版にしたいし、まず、連れ合いにも読んでほしいので購入しました。
 
以前に読みかけの時、ブログで「ふたり」とは皇后美智子さんと[苦海浄土]の石牟礼道子さんのことだ、と記しましたが    違いました。
 
いろいろな「ふたり」のことだ、と思いました。
 
前半は美智子さんと石牟礼さんの交流の話中心ですが、後半は長年に渡って、作家としての、水俣病問題の運動家としての、そして人間としての石牟礼さんと協力し、支えて来た渡辺京二さんとの「ふたり」が主になります。
 
でも、それだけでも括れない気がします。
 
始めはそんな気はなかったのに石牟礼さんによって いろんな深刻な諸問題を知るにつれ、
「義を見てせざるは勇無きなり」
と、徹底的に患者に寄り添い、後の水俣訴訟の元になる[水俣病を告発する会]を立ち上げた渡辺氏、そして6歳年上の高校の教師であって最初に「告発する会」のメンバーになった本田啓吉氏の支え。
これも「ふたり」に思いが馳せられます。
 
もとより水俣に縁のなかった本田氏の魂に火をつけたのは渡辺氏のビラの内容であり、そして[苦海浄土]の元となった石牟礼さんの「空と海のあいだに」の世界観だったそうです。
 
「その世界はそっくりわたしの曽祖母や祖母の世界であり、母方の祖父母の世界であった。(中略)
わたしは石牟礼さんに教えられて、水俣病がわたしの祖父母の世界にかけられた破壊攻撃であることを思い知った。
祖父母の世界は 風俗は変わっても父母の世界であり、やはりわたしの世界でもあった。」
 
秀れた文学作品とか芸術作品というのは、例え直接自分が体験していなくても心や魂に届くことによってその人の想像力に働き、人の事を自分の事のように感じさせる力があるのですね。
 
[苦海浄土]はルポルタージュやノンフィクションを包含した素晴らしい「文学」です。
水銀に侵された患者さんの症状や苦しみはもちろん読んでいて辛いのは確かですが、それを超えたものがあります。
なんというか、うまく言えませんが「崇高な魂」と言いますか…
 
そして「ふたり」の意味の中には天皇陛下と美智子さんの「ふたり」も入っているような気がします。
 
いずれにしても「1」+「1」は2ではない…
 
そんな意味のこもった題名でしょうか。
 
なんとなく[苦海浄土]は敷居が高い…
(かく言う私も一つ目しか読んでなく、続編、続々編が又とても貴重と聞きます)と思われる方もぜひこの[ふたり]をお読みになってください。